製品検査

私が初めて配属されたのは製品検査係だった。
製品検査とは本来製造が終わった装置が
設計どうりに動作するかを調べる担当のはずである。

ところが実際はいきなり電源スイッチをONにすると
火花や煙があがりかねない代物だった。

理由は簡単、製造係は手作業で数100本の配線をするので
人間のやること、多くの誤配線が生ずる。
そのため製検担当はオシロスコープで信号波形を
観測しながら誤配線を探していく。
多数の組み合わせを推理しながらパズルを解くように調べていく。
配線が抜けているのはまだいいが、余分な線が
接続されていると探すのに長時間を要した。

その作業が終わると 恒温室に装置と入って高温の上限仕様、
低温の下限仕様に合わせて波形観測や長時間動作テストを行う。

不良個所が見つからないと徹夜作業になることもあり
ある時は高温テストをやっていたX君が床で長々と伸びてるのを
友人に助けられたこともあった。

先輩の話によると、初期の頃は冬の寒い夜
やっと動作するようになったコンピュータの長時間テスト中に
誰かが部屋のドアを開けた途端
冷たい風が吹き込みコンピュータがパタンと停止!
温度に敏感な装置だったそうな。

しかしこの仕事も慣れてくるに従ってどんどん検査時間を
短縮できるようになった。

プログラムをセットして連続試験をやっている間に
さらに高機能の検査用ソフトウェアを作り出せるようになって
それが面白くてたまらなくなった。
その結果コンピュータの信頼性向上に加速度的につながっていった。
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